欲望を愛に置き換えて

  Machinery that gives abundance has left us in want. …More than machinery we need humanity. More than cleverness, we need kindness and gentleness.

 「たくさんの物を生み出す機械によって、わたしたちはもっと必要、足りないという状況に追い込まれている。・・必要なのは機械よりも人類愛、賢さよりも親切と優しさ…」

チャップリンの『独裁者』ラストの演説より

 

ガンジーの言葉

「欲望を愛で置き換えなさい、そうすれば全てがまともになります」 (M.K.ガンジー)

「戦争に反対する運動は健全です。成功することを願います。しかし、あらゆる悪の根本原因、すなわち人の欲望ということを取り上げなければ、その運動は失敗に終わるのではないかと危惧します」

 しかしこのようなガンジーの主張は、当時のインドでなかなか受け入れられませんでした。それはなぜかと言いますと、人の心の中に欲望があるからだとガンジーは言います。つまり欲望という根があるから、人の心は怒りや不安でいっぱいになり、戦争、環境破壊、貧富の格差といった問題が出てくるわけです。ですからたとえば戦争に反対したり、今の時代で言えば原発を廃炉にするための運動をしたりといった活動は、そういった活動ももちろん必要なことなんですが、欲望という根が支える樹木から生えた戦争や原発といった枝を一生懸命切り落とそうとしているのに過ぎないのです。一生懸命運動をすることで、ある瞬間、戦争という枝が切り落とされて戦争がなくなるかもしれません。でも欲望という心の問題をそのまま放っておけば、しばらくするとまたにょきにょきと戦争という枝が生えてきます。ではどうすればいいでしょうか。ガンジーは、心の中の欲望を愛で置き換えることができれば、おのずから心は平安になり、平和で平等でみんなが協力し合う持続可能な社会が実現するんだと言いました。「欲望を愛で置き換える」、ちょっと抽象的な言葉ですが、愛ってなんでしょうか。愛というのは、自分の利益だけを求めないことを言うのではないでしょうか。つまり自分さえよければ、今さえよければという思いをちょっと脇に置いて、自分以外の人も幸せになれるように、未来の子どもたちも幸せに生きて行けるように配慮していく、そういう心を持つことです。ただ単に機械に反対するのではなく、欲望という人間の心の問題を解決していかなければいけないのです。だからガンジーは「欲望を愛で置き換えなさい、そうすれば全てがまともになります」と言ったわけです。