Be the Change!  変化になれ

東日本大震災は大きな被害をもたらしましたし、原発の問題も未だに解決していませんが、これを機に目覚めて方向を変えていきなさいという、警告だったのではないかと、私は思っています。津波によって財産も家も一瞬で失われてしまうのであれば、そうしたものに執着するより、もっと大切なものがあるのではないかと考える必要がありそうです。そしてもうすでに広い大地が汚された以上、まだ汚されていない大地を守ることに本気で取り組むことを今始めるしかないのです。「そんなことを言って、糸を紡ぐなんていう時間のかかることをコツコツとやっていて間に合うの?」と聞かれることがありますが、間に合う間に合わないということよりも、今日やるかやらないかということです。明日では手遅れです。何か思うことがあれば、ぜひ今日から何かを初めていただけたらと思います。人間の命というのは儚いですから、いつ何があるかわかりません。それを考えたら今を本当に大切に生きるべきだと思うし、こういう未来があったらいいなという未来を、今日始めたら良いと思います。糸を紡ぐような生き方をしたいと思えば、今日から糸を紡ぎ始めることです。始めてみれば、その中に自由や独立というものがあることがわかります。つまり、機械を手放し、私たちが私たちの手の内にある簡単な道具を使うことを再び始めたとき、私たちは着るもの、食べるものという生活を自分の手に取り戻すことができるのです。そうすることが、もちろんエネルギーの削減にもなるし、失業問題の解決にもなるのですが、いちばん大切なのは、自分の手に生活を取り戻すということです。
 トルストイは『神の国は汝等の衷にあり』という著書の中で次のように言っています。
「人々は、自分の足で自分たちのゆきたい所、ゆくべき所へ歩いてゆく必要はなく、彼らの足元の床が自分で動いて、別に足を動かさなくともちゃんと目的地につく、と説き聞かされる。」
 省エネ家電に買いかえればいいというような考えも、自分たちの手足を動かさず自動的に動く床を作ろうとしていることかもしれません。あるいは原発の問題では、送電線の国有化や、工場などの事業者の電気料金の値上げなどが議論されました。でもそれを実現しようと思ったら、それこそひとりでに動く床を作るような大変なことです。しかし私が今日から糸紡ぎを始めて、工場で作った服を買う代わりに自分の手と足を使って作った服を着れば、そして、みんなでそれをやることができれば、それだけで衣類を作っている工場を止めることができます。そうすると工場で衣類を作るために使っている電気が不要になります。だからひとりでに動いて私たちを目的地に連れて行ってくれる床を作るのではなく、自分たちの手足を使って自分たちのゆきたいところへ歩いていく、これが大切なのです。それこそが、私たちの手の中にある自由です。これに目覚めなさいとガンジーは訴えたのです。そして、インドの人々は、実際にカディーを着て海岸に行き、塩を作ることで、それを実践しました。そして、独立を手にしたのです。
 日本は独立国家かもしれないけれど、よく考えてみれば世界中の市民が多国籍企業などの大企業の奴隷のような状況に置かれているとも見て取れます。そういう企業から独立をするためには、そういう企業の製品を買わないことが大切になってくると思います。工業製品を買わないだけでも電力消費を減らすことができます。私たちは家庭で電気を消費するだけではなく、工業製品を買うことを通して工場で使う電気も間接的に購入しています。そして私たちがこのようにどうしようもなく電気を買い続けることが、東電のような企業に大きな力を与えています。それをやめていくことが必要であり、その先に自由があります。そのためには私たちは大地とつながりを取り戻す必要があります。