ツバメと手仕事

人生のABC 
 我が家にツバメの巣ができてしまいました。3日ほどでそれなりの大きさの巣になってしまいました。ツバメの小さなくちばしで運べる量を考えると、何十往復どころか、百回以上往復して材料を集めて作ったんだろうなと思います。
 人生のABCは、(A)当たり前のことを(B)バカにせず(C)ちゃんとやることだと、ある本に書いてありました。ツバメにとって巣を作ることが当たり前のことなら、人間にとっての当り前は何でしょうか? 朝ちゃんと起きて、ご飯を作って、食べて、片づける。洗濯をして、掃除をして気持ち良く暮らすことかなと、ツバメを見ながら、私は思いました。そのような家事の延長線上に、農作業や手仕事を位置づけることができれば、鳥のような自由な暮らしが手に入るのかもしれません。
自由と身勝手の違い
 正社員の雇用が減り、ブラック企業が増え、低賃金不安定雇用が増えているこの時代に、あくせく働くのではなく、もっと自由な暮らしがしたいと思う人が増えるのも、当然のことです。
 しかし、鳥のような自由な暮らしというのは、何でもやりたいことを身勝手に追及することではなさそうです。たとえば、巣を作るよりも、宇宙旅行がしたいという野望をツバメが抱いたら、どうなるでしょうか? 幸いにして、そのような野望を抱くツバメがいないおかげで、毎年春になるとツバメのさえずりを聞くことができます。
 当たり前を放棄して、とんでもない野望を抱いてしまうのは、人間だけです。そして、そのことが地球を破壊し、地球上の生き物に迷惑をかけています。そろそろ目覚めないといけませんね。
『直耕・直織』
 安藤昌益という江戸時代に思想家は、『直耕・直織』を唱えました。「男は耕し、女は織る」これが人の本来のあり方だと言うのです。やりたいことを仕事にと主張される方もいらっしゃいますが、『直耕・直織』を厭うかぎり、本当の生き方にはならないのではないかと、私は思っています。
 自由に空を飛ぶ鳥が自由に生きているように見えても、実は、巣作りに励んでいるように、私たちも暮らしの基本をきちんとやっていきたいものです。そして、家事だけでなく、農作業や手仕事にも励んで、安藤昌益の言う『直耕・直織』を実践できればと願います。今すぐに『直耕・直織』だけで暮らすことは難しくても、半農半Xから始めて、徐々に自給的暮らしにシフトしていければ素敵です。暮らしの基本を自分の手に握ることができれば、安心があるはずです。家族で協力し合って、衣食の必要が満たせれば、家賃が安い田舎暮らしであれば、週3,4日アルバイトに出ればなんとか暮らせるのではないでしょうか?
自由を得るカギ
 田舎暮らしを成功させるコツは、「直耕・直織」という地味な仕事をこつこつとやり遂げる意志です。ツバメを見習って、10回、20回で諦めないで、100回、200回と続けていきたいものです。500本、600本・・・の経糸を1本ずつ通していくことが楽しいと思える境地を味わいたいものです。
 そのような境地に到達できれば、幸せ・自由はこの手にあります。自分たちが作ったものを食べて、着る暮らしが実現できるのですから、人に買ってもらわなくてもよいのです。デザインに凝ったり、宣伝する必要もありません。自らの労働力を切り売りしなくて済むのです。ただし、地味なことを何百回も続けていけるかがカギです。あなたはどちらを選びますか?